いつも紀州備長炭の金寿をご愛顧いただきまして、誠にありがとうございます。皆様方からお寄せいただいたご質問の中から、代表的なものを取り上げて可能な範囲でお答えして参りたいと存じます。
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Q1.備長炭の中で紀州備長炭は最高品質で有ると言われますが、実際どのような所が違うのでしょうか?また紀州備長炭と表示されていても、中には粗悪品も沢山あると聞きますが具体的な見分け方があったら教えて下さい。
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紀州備長炭はその長い歴史と伝統の中で培われてきた製炭職人による技とウバメガシという最良の天然素材を見事にに融合させた最高傑作です。「備長炭」という商品名は元禄年間に田辺の商人-備中屋長左衛門(備後屋長右衛門とも)がその名を冠して江戸に送り、好評を博したのがその由来であると言われています。しかし製炭技術その物は遙か以前から存在していたようです。備長炭と一口で言っても、現在では土佐炭、日向炭等といった国内備長炭の他に中国備長炭などの輸入品も沢山あります。どれも紀州の職人が教えに行ったものですが、やはり品質においては紀州備長炭が群を抜いているのはご承知の通りです。
しかし紀州備長炭というブランド名が先行するあまり、一部の悪徳業者の中には遺憾ながら紀州備長炭と偽って粗悪品を混入して販売している業者も見うけられました。やはり炭窯をはっきり明示して販売している業者の方が安心です。以下具体的な見分け方を列挙してみたいと思います。
1.硬度、比重が決定的に違います。
よくしまった紀州備長炭は、叩くとチーンという鋭い金属音がします。これにたいして、中国炭などの備長炭はカンという鈍い音がします。また紀州備長炭は手に持ったとき、他の備長炭に比べて比重が異なり、ずしりと重いことがわかります。
2.火力、燃焼時間が違います。
炎は立たないのですが、火力が強く遠赤外線効果で内部までよく火が通ります。実際、燃料として使用すると、燃焼時間の長いことに驚かれると思います。温度調節も500~1000度位まで自由自在です。ご家庭でバーベキューなどでご利用されるときは少量の備長炭で十分で、しかも長時間、燃焼持続しますから継ぎ足す必要は有りません。
3.香りが違います。
ここで言う香りというのは、特別な樹の香りではなく素材の味を引き出すそれです。炭火に鼻を近づけてみて下さい。形容し難いですが、何とも食欲をそそるようなテイスティ-な香りです。鼻につんとくるにおいがしたり、独特の癖のある匂いを発して食材にその匂いが付着したりするのは、紀州備長炭などでは到底ありません。一流料理店で、中国炭などをけっして使用しないのはこのためです。
4.灰がほとんど生じません。
完全燃焼して、灰があまり生じないのが特徴です。紀州備長炭の看板を掲げているお店で、食事の機会がありましたら、是非炭火を覗いてみて下さい。もしも灰が異様に溜まったり、それが飛び散って食材につくような事があるようでしたら、それは紀州備長炭では有りません。また紀州備長炭は一般に灰が白いと思われている向きもありますが、最高の炭材であるウバメガシで製炭した備長炭から生じる灰は、少し茶褐色で真っ白な灰にはなりません。
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Q2.備長炭は作るのたいへんですか?
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備長炭が製品化されるまでのプロセスには、ウバメガシの伐採=運搬=木造り=窯入れ=窯だし=選別といった作業があります。この一連の作業に二週間以上かかります。中でも大変なのは窯だしのときで、1300度前後にも達する、高温に蒸し焼きされた備長炭を一昼夜半かけて、一睡もしないで、少しずつ取りだしていく作業でしょうか。1トンの原木からできる備長炭は100kg以下で、更にその中で高品質のものは半数以下になってしまいます。
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Q3.炭を作るお仕事は、何年くらいすれば一人前になれるのですか?
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安定して高品質の備長炭を製炭できるようになるまで、ふつう10年以上かかると言われています。当窯では、三代が60年、四代が15年以上のキャリアを有していますが、季節、天候、原木、窯の状態等によって一様ではありません。とりわけ一番難しいのは新窯を築造したときで、熟練者でも窯の癖をつかむまでかなりの時間を要します。
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Q4.備長炭、私たちにどう使ってほしいですか?
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具体的な使用方法は、「効用と効果」のファイルでも述べていますから、そちらの方をご参考にして下さい。備長炭というのは、ウバメガシいう最高の自然素材と伝統技術それに熟練技術者の三位一体化した結晶だと思うんですね。いかに科学技術が進歩したとしても、備長炭がそうであるように、人の長年の経験と勘に依らなければ出来ないことが沢山ありますよね。そういった部分を大切にしたいと思うし、こうした考えや備長炭の人に対してもつやさしさやぬくもりに共感していただける方々に使って頂きたいですね。
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Q5.紀州備長炭はどうして高価なのでしょうか?
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先ず、原木であるウバメガシの希少化から、仕入価格の高騰が挙げられます。現在では、管理に費用のかかる杉や檜の山林よりも、ウバメガシの立木の多い雑木山の方が、高値で取引される程です。
次に、1トンのウバメガシからできる備長炭は100キログラムに満たなく、その中でも、硬度、密度に優れた高品質なものは、三分の一以下になってしまう現状があります。逆算致しますと、1トンの高品質の備長炭を製造するのに必要な原木は、1トン×3×10=30トンということで、概算でもこれだけの原木を用意しなければなりません。備長炭の大きさから元の原木を推定すると、その5.6倍以上のサイズであると説明すれば、いかに備長炭がよく締まって硬度が優れているのか分かります。
こうした理由から、紀州備長炭は一見高価に見えますが、決して高くないことがおわかり頂けると思います。
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Q6 写真で見る限り、金寿さんの備長炭は、デパートなどでよく見かける製品よりは、品質の点において優れているように見受けられますが、実際上どのように違うのでしょうか? |
難しいご質問ですが、ちょっぴり自負をこめてお答えしたいと思います。金寿では、名コピーを発するいかなる炭窯あるいはいかなる製炭士が、徒党をなして押し寄せて来ようとも、微動だにしない高度な製炭技術及び高品質の備長炭を産しているという自負があります。このような自信のバックボーンはどこから生ずるのでしょうか。
それは
(1)紀州で最も古い歴史と伝統を持つ炭窯の一つで
(2)黒潮洗う南紀串本原産の高密度ウバメガシを炭材として
(3)とどまる所を知らぬ匠の技が
見事に結実しているからに他なりません。
(1)について
初代原 吉次郎は1860年代の初頭(文久の時代)において、備長炭発祥の地である和歌山県南部川村にて,営々黙々と製炭業を営んでおりました。(先祖はそれ以前の遙か元禄年間から、製炭業に従事していたものと推測出来るが、古文書の類は存在しないため、実存が確認されている吉次郎を初代とした)
彼は、二代梅次郎が十歳前後の頃、南部川村を後にして、より優れた炭材を求め南紀に移って参りました。現在の当主は、梅次郎の長男=三代原 寿雄で、更に、四代原 一志へと金寿の伝統は脈々と受け継がれています。
「金寿」の商号の由来は二代梅次郎によるもので、備長炭の窯だし風景から命名したものであると伺っています。すなわち、1300度から1400度にも及ぶ黄金色に輝く幻想世界に、人々の幸と繁栄をオーバーラップさせてこの名がついたようです。爾来、「金寿」の商号で長年にわたり、東京方面(平成十年末まで)に出荷して参りました。金寿が窯元直販するに至った経緯については、中国炭を始めとする粗悪品が、中間業者の手によって混入し、本物の紀州備長炭の存在価値が希薄になったこと、あるいはITをはじめとする通信及び物流システムが飛躍的に向上し、本場紀州備長炭を直販価格にて、一両日中に、全国の皆様方にお届けできるようになったこと等があげられます。
(2)について
備長炭の善し悪しは、原木で決まると言っても過言ではありません。初代吉次郎が南紀に定住した理由は、黒潮洗う海岸線に自生するウバメガシの方が樹がよく締まり、非常に高密度であるからです。
事実、同じ太さの樹になるのに、山間部では樹齢10年であるのに対して、海岸沿いでは20年以上と倍の時間を要します。すなわちこれは同じ太さでも、樹齢10年の樹は20年のそれと比較して、その分柔らかいということになります。(金寿では樹齢40年以上の樹を選定しています。山間部では40年も経つと、樹が太すぎて使えなくなります)樹が柔らかいと、どうしても良い品質の備長炭は製造し難いのです。
金寿では、地元原産ウバメガシの立木を、山林所有者から代々、独占的に伐らせて頂いています。ですから、原木で困ることはありません。南紀の大自然が育んだ、一窯に必要な分量のウバメガシだけを伐採し、すぐそれをケーブルまたはモノレールで運搬して、乾燥しないうちに木造り後窯入れを行います。こうして高品質の備長炭が生まれるのです。尚、金寿では、硬度、燃焼時間等品質で若干劣るアラカシは使用していません。(アラカシは紀州備長炭の定義の中に含みます)
(3)について
紀州でも腕利きの職人は、わずか数人とも言われています。どの辺に実力の差異が生じるのでしょうか。紀州備長炭であれば、硬度の高いのは必然です。しかし、高密度でヒビの少ない、優れた質感をもつ備長炭を焼いてこそ、本物のスーパー職人であると考えます。
金寿では、先祖伝来の製炭技術と高度な匠の技で、日夜、より本物を目指して努力しています。しかしながら百万言を弄しても、「百聞は一見に如かず」と申します。私たち金寿は、皆様方に心から、喜んでいただける製品をお届けすることにより、その付託にお応えしたいと存じます。
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